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さようなら
短編・掌編

花束をきみに

「じゃあその時には花束を贈ろう。夏ならば大輪の向日葵を」
 君が軽い調子で言った言葉が、冗談めかした言葉が、却って冗談に聞こえなかったから、僕は冗談で返した。
「冬ならば」
「真っ赤なポインセチア」
「華やかでいい」
 門出だからね、と返そうとして、声が喉に絡まった。

 行くなとは、言えなかった。
 自分に君を引き止める権利などないのだろう。

「君に見送られて死ねるなら幸せだ」
 小瓶に詰められた毒を、君は冬の太陽に翳した。

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