短編・掌編 花束をきみに 2021.01.032021.05.09 「じゃあその時には花束を贈ろう。夏ならば大輪の向日葵を」 君が軽い調子で言った言葉が、冗談めかした言葉が、却って冗談に聞こえなかったから、僕は冗談で返した。「冬ならば」「真っ赤なポインセチア」「華やかでいい」 門出だからね、と返そうとして、声が喉に絡まった。 行くなとは、言えなかった。 自分に君を引き止める権利などないのだろう。 「君に見送られて死ねるなら幸せだ」 小瓶に詰められた毒を、君は冬の太陽に翳した。